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隠匿シリーズ☆番外編
第3章 ご主人様の裏の顔

翌朝。キッシュは家の庭先で母に肩を抱かれ、村人と共に領主の元へと行く父を見送った。
庭には母が育てる花が多く咲き乱れ、風に揺れている。
父はキッシュと母に向け、必ず領主を説得してみせると言い残し、力強く手を振った。
──その背中がキッシュの見た父の最後の姿だった。
「──だからあれほど止めてと言ったのに」
リビングの古ぼけた木の机で肘をつき、掌に涙に濡れる顔を埋める母。一緒に行った他の男の妻もいて、同じように泣いている。
キッシュは部屋の隅で膝を抱え、呆然としていた。
「見せしめに殺すなんて……!」
そう、父は殺された。幼いながらもそれだけは理解できる。
キッシュはあとから知らされたことだが、ラインハルトでは罪人を処罰するのであっても、法に添った手順を踏み、罪状が確定してからでないと勝手な生殺与奪権はない。
だのに領主は威厳を示すためなのか、逆らう者を更に出さないためか。
手順も法も、人の命さえも踏みにじり、抗議に来た男たちを手打ちにしたのだ。
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