この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
隠匿シリーズ☆番外編
第3章 ご主人様の裏の顔

母はショックを受け、床に臥せってから一ヶ月も経たず、父のあとを追うように天に召されてしまった。
元来病弱だったこともあり、食べ物も底を尽き。薬すら買えない貧困で。幼いキッシュになにができようか──否、なにもなかった。
父の代わりに田畑を耕してはみても、誰もかれもが困窮し、作物を買う相手がいない。
知り合いに薬を分けてもらうのも限界があった。皆困っているのは一緒なのだから。
「キッシュ……。ごめんね……。どうか強く生きて。お父さんやお母さんの分まで……」
最後の瞬間までキッシュの未来を案じ、憂いた優しい母。キッシュは僕も連れて行ってくれと懇願した。けれど母は生きろと言う。
両親を亡くし、どう生きろと言うのか。
身寄りもなく、頼れる人も皆生活するのに精一杯。
人一人の食いぶちが増えれば、自分たちの死期が早まるだろう。誰に頼ればいいのだ。
キッシュは絶望した。
理不尽に不条理にすべてを奪われ。
誰かを恨まずにはいられない。奪った領主を、助けてくれない国を、腐りきった世の中を──。
.

