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隠匿シリーズ☆番外編
第3章 ご主人様の裏の顔

久し振りに食べたパンとハムの味は思いの外しょっぱかった。涙と混じっていたのだ。
キッシュは涙を止められず、訳も解らず泣きながら食べた。
パンやハムが美味しかったからなのか、人に優しくされたのが久々だったからなのか。
両親の元へと行きたいと願いながらも、こうして浅ましく生に縋りついている卑しい自分が嫌なのか。
見ず知らずの美しい青年は、泣きながら貪るキッシュを黙って見守っていた。
腹が満たされると、人とは不思議と落ち着くものだ。
改めて青年を見ると、恐ろしいほどの美丈夫だった。この廃れた村に似つかわしくないくらい。
小さな村で顔見知りでない者を探すほうが難しい。だからもう一度問う。
「あんた……誰?」
「俺はレオだ。旅人……みたいなものだ」
「旅人? こんななんにもない村に?」
キッシュの怪訝な眼差しを肩を竦めて受け流すレオ。
命を救ってもらった恩人ではあるが、よくよく考えると怪しいことこの上ない。
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