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仔猫と狼
第13章 距離
結局鳥居さんにもらった返信にもマイナス思考が働く。
クッションに顔を埋めたままどれくらい時間が経っただろう。
視界の端に携帯の光が目に入った。
誰だろう。
アドレス帳には仕事関係以外に家族しか登録していない。
きっと母だろう。
返信するつもりはなかったが緊急だと困るので確認だけしようとメールを開いた。
でも、そこにあった名前は母でも父でもなかった。
「え…。」
驚きで目を見開いた。
「鳥居さん…?」
助かった
たったそれだけが書かれたメールだった。
一瞬なんのことか分からなかった。
しばらく考えてお昼時の電話だと気がついた。
「お昼の時のだ…。」
さっきまでの自己嫌悪的思考が嘘みたいにぴったりと止まった。
驚いたっという感情が一番大きかったが、それよりも自分の行動がほんの少しでも、敬愛している人の役に立った。
それが、苦しくなるくらいに嬉しかった。