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仔猫と狼
第10章 知らない


大丈夫ですか?


なんて、そんな薄っぺらい言葉をかけるのは間違ってる気がした。



だから私は、私に背を向け溢れ出る涙を拭いている鳥居さんの服の裾をつかんだ。




なにも言葉はいらない、ただ私の知らない鳥居さんのそばにいたいと思った。








知らないなんて当たり前のことなのに…。





寂しいなんて、変だってわかってる。






それでも、思ってしまうんだ。






この気持ちがなんなのかわからないまま、ファンとしての恩人への敬愛じゃないことだけが確かだった…。









鳥居さんはなにも言わない私の手をつかんだ。







強く掴まれたから少しビクっとしてしまったけど、私は変わらず動かなかった。






私が抵抗しない様子を見て鳥居さんは、私の上に倒れこみ渋るような声で










「抵抗しろよ…。」






悲しそうに言って、再び私の体に手を這わせた。






「んん…。」






そう言われても、私は抵抗する気にはなれなくて…








私の上にいる彼の身体を力強く抱きしめた。










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