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仔猫と狼
第11章 知りたくない
「え?」
そう、声を発したのは鳥居さんの方だった。
きちんとお礼が言えないまま鳥居さんと別れるのが嫌で思わず掴んでしまった私。
そんな自分の行動に後悔しつつ頭を下げた体制でなんとかお礼の言葉を言えた。
そうしてホッとして頑なにつかんでしまっていた手がするりと落ちていくのを鳥居さんがつかんだ。
そんな鳥居さんの行動に私はびっくりしすぎて顔を上げた。
そこで私の目に映ったのは驚いている鳥居さんの姿だった。
まただ…。
この意外な姿のほうが素の鳥居さんのような気がする。
私はその姿をじっと見つめた。
「…。」
「…。」
でも、それは全て一瞬のことで鳥居さんはすぐに私の手を離し、去っていった。
残された私は、貸してもらった鳥居さんのシャツをぎゅっと掴み部屋の鍵を開けた。
あの…手を掴まれたことに…意味があるのだろうか…。
鳥居さんに掴まれた手首が…、触れられた身体が…。
ひどく熱く感じられた…。