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仔猫と狼
第11章 知りたくない
片岡が住んでいるはずのアパートの一室の前に着いた。
あれから気まずい空気のまま歩いてきてしまった…。
片岡も一定の距離を保ちつつ黙ったままだ。
…まぁ、あんなことされたあとだから当たり前っちゃあ当たり前か…。
「ここでいいんだよな?」
山田からもらっていた地図通りにきたからあっているはず。
こいつも道が違うとか言わなかったし…。
「…はい。」
「じゃ。」
ちゃんと部屋の前まで送り届けたし、これで山田と結城さんも文句ねぇだろ。
俺は、片手を上げて背を向けた。
「…っ。」
「!」
歩き出した俺の体が後ろに引っ張られる。
なんだ?
原因は、俺の服の裾を片岡が掴んだことだった。
驚きつつ振り返ると片岡は俺の裾をつかんだまま深々と頭を下げていた。
は?
片岡の裾をつかんでいる手はかすかに震えている。
どうすればいいか分からなく固まっている俺に片岡は声を絞り出した。
「お、送ってくださりありがとうございました。」
「あ、ああ。」
言えたことに安心したのかつかんでいた手はするりと落ちていく。
その落ちていく手を俺はとっさにつかんだ。
「え?」