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《番犬》が女に戻るとき...
第13章 球技大会 ~汗と鉛と、苛立ちと~
人と人の間をすり抜けてゲームが見える位置まで茜はやって来た。
男子バスケの決勝は2年同士──
1組と3組らしい。
“ あいつ…まだ完治してないくせして ”
コート内を走る零の姿を確認し、そして彼の手の包帯に目をやる茜。
ほとんど治りかけのようだが、まだ右の指を満足に動かせないはずだ。
「……!」
零が味方からパスをもらった。
彼は当たり前のように左手でドリブルをこなし、姿勢を低くたもちながらフェイントをかけ相手を翻弄する。
右手は、ときどき軽く添えられるぐらいだ。
パスもほぼ片手。
…見事としか言いようがない。
あれだけマークされているにもかかわらず、零は絶妙な位置でボールを受けとる。
──ピッ
また笛がなった。
彼のレイアップシュートが決まったからだ。
歓声が一段と大きくなるなか、零のプレーを見る茜の顔は悔しそうだ。
その時…
「……っ」
「──…ハァ、…!」
試合中の零が彼女に気がつく。