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《番犬》が女に戻るとき...
第13章 球技大会 ~汗と鉛と、苛立ちと~

茜のポジションはFWでもDFでもなく、中盤でそれらにゲームを繋ぐ役だった。
…といってもたかだか学校のスポーツ大会なので、それに拘らず臨機応変に対処する。
サッカーは茜にとって球技の中では特に得意なスポーツだ。
正直な話、バレーボールは中高の体育ぐらいでしかやらない。他のスポーツも同様だ。
習い事などの経験がなくとも、もともとの運動神経でそれらをカバーしてきたにすぎない。
しかしサッカーは小さな時から慣れ親しみ
小、中学生の時は地域のクラブチームで男子に混ざり試合をしていた。
──そんな彼女の実力はかなりのものだ。
「すげえ…久藤。全然ボールとられない…」
「あいつ、ちゃんと女だよな……!?」
正確なパス
確かなキープ力
冷静な判断
スピード展開の試合のなかでも、彼女のカリスマ性は際立つものがあった。
「…ハァ、そのスペースに飛び込め! 」
「──…」
FWの零は、自分のチームが攻められているのを後ろに眺めながら
仲間に指示を出す茜の声を聞いていた。

