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《番犬》が女に戻るとき...
第23章 夢を語る瞳
警戒しつつ茜はベッドに向かう。
その距離が縮まると、零が彼女の制鞄の端を掴んで引っ張った。
茜は鞄を離さなかったので、必然的にバランスを前に崩し……次の瞬間には、零の手に支えられた状態でキスをしていた。
「……っ」
離れた零の唇が、耳許で囁く──
「……戸籍偽造男と初めて一夜を過ごした感想は?」
それは静かに、普段よりも低めの声で。
「……なんだそれは」
「いや、純粋な疑問だけど」
彼が何を言おうとしているのか
茜にはいまいちピンとこない。
それを考えながら、茜は目の前の二つの瞳をじっと見ていた。
“ 嘘だらけの、篠田か…… ”
確かに正体を知って度肝を抜かれたし、恐ろしい男だと思った。
“ けど、今は── ”
「……ふん」
慌てていた筈の彼女が
不意にその表情をがらりと変えた。
「絶対に…お前を攻略してやるよ」
「──…!」
「それが、今の私が篠田に思うところだな」
「…っ…さすが」
まさかのタイミングでの宣戦布告に笑うしかない零。
今度は茜の方から…そんな彼にキスをした。