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《番犬》が女に戻るとき...
第23章 夢を語る瞳
「あなた…」
「──…ハァ、っ…キミは馬鹿か」
「…っ」
左腕で彼女を、右手で本を受け止めたハルク。
彼が掴んだその本は梗子の頭に当たる寸前だった。
ハルクの登場に驚いていた梗子は
沈黙を挟んだ後で、自分がさらされていた危機を思い出して慌てて体勢を立て直した。
「ごめんなさい…!」
顔を赤くして謝る。
それはハルクに照れているのではなく、バランスを崩した自分を恥ずかしがってのことだった。
「危ないところで助かりました、わたし…その、少し急いでいたの…っ」
梗子はドキドキと興奮した胸に手を当てる。
こんなアクシデントを予想していなかったハルクも、咄嗟に助けたものの落ち着かない様子だ。
「僕がいなかったら怪我をしていた…!」
「……っ」
「Aha..──はぁ、勘弁してよ」
ハルクの性格がどうであれ人格がどうであれ、女性には紳士的に振る舞う、イギリスの上流階級で教育されたことにかわりはないのだ。