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《番犬》が女に戻るとき...
第23章 夢を語る瞳

梗子の親は、海外を軸とした旅行会社の社長だ。

それは4組の男子から聞かされていたし、その会社名は、ロンドンホテル王の息子であるハルクも知っている契約相手だった。


…その会社のご令嬢が、将来は建築家に?

ジョークでしょ。


「キミは親の会社を継がないの?」

「え、どうして?」

「どうしてって…っ」


聞き返されたハルクのほうが口ごもる。

彼にしてみれば親の経営を引き継ぐのは当たり前で、というより…継ぐために育てられてきたようなものだったから。


一方で梗子には、ハルクの言っていることの意味がわからなかった。


「…旅行も好きよ。今までにわたしが、好きな建築を巡っていろんな国をまわることができたのも…両親のお陰だと思っているわ」


海外へ行くにはそれなりのお金が必要で…

それを何度も経験している自分は、金銭的に恵まれているのだという自覚を梗子は持っていた。



「でも将来の夢とは関係ないし…」

「……!」

「家族はみんな、わたしの夢を応援してくれます」

「そんなことが…あり得るのか」

「…え? 」

「……やっぱりキミは馬鹿だよ」

「まぁ…」


初対面にも関わらずバカ呼ばわりしてくるハルクに、梗子は悔しがるというより驚いている。


──その反応が、ますますハルクを苛立たせた。


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