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『うぅ』としか鳴けない
第12章 父の決断
『わかりません…ただ…』

俺は続けた。


優しく、笑顔の眩しい母だった。父の後ろに居る母は、父を尊敬し、といって、怖ず怖ずすることなく、父を陰でさりげなくサポートする母は、間違いなくそこを母の定位置とし、父も、それを良しとしていた。

なのに、ある日突然、父は母を棄てた。

それからだったと思う。人を斜めに見てしまうようになった。不信感からだった。母が、泣き言や愚痴を吐けば、幼い自分にも理解出来たかもしれなかった。

しかし母は、全然変わらなかった。優しく、笑顔の眩しい母、そのままだった。

信じられるのは、命や感情の無い物だけになっていった。

父の血は、自分の身体にも流れている。傲慢な血だ。人に対して、裏に隠された部分を見てしまう自分は、女に対しても、素直にはなれなかった。

完全支配をすることで、安心するようになった。その方法がSMだった。




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