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電池切れ
第7章 42歳・・ルール違反

あっという間に年が明け、父のことが少し落ち着いた頃、

私は悟にメールをした。


葬儀の時のお礼を言いたくて・・と

そして一度だけ、と会う事をねだった。


32の時、悟は一回違反した。

だから私も一度だけ・・

そう約束して、悟と会うことになった。






この時は、地元から離れて新宿で会うことにした。


土曜日の夕方。

多くの人がごった返す新宿の東口で待ち合わせた。

しばらく来ていなかった大都会の慌ただしさに少し疲れたが、

悟と飲んでいるうちに神経が和らいできた。



「早いな、もう3ヶ月か・・」


「うん・・あっという間・・

 なんだかまだ片付かないけど、ちょっとは落ち着いた。

 だけど・・心の疲れがとれない・・」



カウンターに並んで座る悟の肩に寄りかかって、私は

夫のそれとは違う癒しを求めた。



「ルール違反・・私も一度だけさせて。今はね、

 なんか全部忘れちゃいたいの・・」



いまだ心がしおれている母の事、支えてくれる夫の事、

そして父が死んだこと・・

ほんの一時でいいから忘れたかった。

悟は、黙って私の願いを受け入れてくれた。




その街のにぎやかさとは反対に、私達は息をひそめるようにして

ラブホテル街を歩いた。

きらびやかなホテルに入ると、最新の設備には目もくれず、

私は悟の胸に顔をうずめた。


今日は・・激しくなくてもいい。

私を包み込んで・・癒して・・


せつない声に、悟はちゃんと応えてくれた。

ゆっくりと、ゆっくりと、私をほぐしてくれた・・










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