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~大人のための官能童話集~
第1章 序幕‥赤ずきんちゃん
「ニーナ?! あんな化け物に関わってはなりません!」
「! どうして、なんでそんなこと言うの?! 彼は……私を助けてくれたのに」
「……!」
背中越しに振り向けば、涙目に自分を見つめる少女。
穢れた存在の自分とは違う、まっさらで透き通った瞳に少年は目を奪われる。
心臓はドキドキと異常な速さで鼓動を刻んでいた。
「お願いだから、行かないで。わたし……まだあなたの名前教えてもらってないわ」
「…………」
名乗る道理はない。
しかし、自分の名を教えたところで少女と関わることはもう二度と無いのだ。
それならば……。
少年は寸刻の間迷いながらも、己の名を口にした。
「…………シルヴァ」
この名を名乗るのはきっと、最初で最後になるだろう。
そう、自覚しながら。
「……シルヴァ、助けてくれてありがとう」
「…………」
少女の言葉には敢えて返事をせず、今度こそ身を翻す。
『あっ!』と小さく声が上がるのが背後から聞こえたが、振り向かずに走り去った。
その去り際。
「わたしの名前はニーナ! 絶対、また会いに来るから!! シルヴァ!!」
その言葉を最後に、ニーナの声はシルヴァの耳から遠ざかっていった。
これでもう二度と会うことは無いだろう、と。
必然的な運命に胸を痛めながら――…
To be continue...