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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第24章 《巻の弐―夢を売る男―》
「夢は要らんかね~、夢は要らんかね~」
独特の口調で客を呼びながら通りを歩く男の姿に、泉水はふと眼を止めた。
江戸の夏の風物詩には実に様々なものがある。金魚売りに朝顔売り、西瓜売り、風鈴売りなど、涼を求め暑い夏を少しでも快適に乗り越えようと人々はこぞって買い求める。
もっとも今はまだ、その夏には決まってお眼にかかる行商人の姿は見当たらない。昼間は夏並みの陽気とはいえ、江戸はまだ皐月に入ったばかりである。