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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第3章 《巻の弐―運命の悪戯―》
この男がこの屋敷の主であるということは、つまりはこの男こそ榊原家の当主泰雅その人であることを示す。
あまりに酷い現実に、泉水は茫然とするしかない。十七年間で初めて知った恋が無惨に潰えた瞬間であった。切れ者ではあるが、女狂いとまで囁かれている遊び人が泉水の恋い焦がれた男の正体だった―。
「私はこの家の奉公人ではありませぬ。あなたは、あなたというお人はご自分の妻の貌さえご存じないのですね」
叫ぶと、涙が溢れてきた。
あまりに酷い現実に、泉水は茫然とするしかない。十七年間で初めて知った恋が無惨に潰えた瞬間であった。切れ者ではあるが、女狂いとまで囁かれている遊び人が泉水の恋い焦がれた男の正体だった―。
「私はこの家の奉公人ではありませぬ。あなたは、あなたというお人はご自分の妻の貌さえご存じないのですね」
叫ぶと、涙が溢れてきた。