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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第24章 《巻の弐―夢を売る男―》
泉水がおつやを連れていった茶店は、息継坂を降りきった先の、小路を挟んだ斜交いにちんまりと建っている。丁度店先から延々と続く石段や山門がはるかに見渡せる場所だ。もう六十を過ぎた腰の曲がった老婆が一人で細々と営んでいる。随明寺の名物といわれる桜餅は、この茶店でしか売っていない。老婆が一人だけで作っているため、花見時分の人出の多い時季には、店の前に行列ができるほどの人気だ。が、昼前には早くも売り切れご免となることも多い。