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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第24章 《巻の弐―夢を売る男―》
おはるが残した金は、老婆と幼子が慎ましく暮らしてゆくのには十分すぎるほどあった。姑は、おはるがどんな想いでこれだけの金を貯めたかなぞ、少しも思いやろうとはしなかった。むろん、幼いおつやには推し量る術(すべ)はなかったけれど、縄暖簾の仲居の勤めだけで、これだけの金を貯めることは不可能であった。おはるの奉公していた店は、二階の小部屋で仲居に客を取らせていた。おはるの帰宅はいつも深夜であったが、表の軒燈を消した後も、おはるは客の相手をしていたのだ。