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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第25章 《巻の参―真(まこと)―》
三和土に立って話をするおはるの背後に、狭い家の中がかいま見えた。内職の材料らしい色紙や紙細工の花が所狭しとひろがっている。一つ一つ、手作りで造花を作るのだ。それは、今の季節に相応しく、薄紫と白のふた色の藤の花であった。幸せに暮らしているとは言うけれど、今の生活もその日を暮らしてゆくのがやっとなのだろう。それでも、おはるにとっては、大切なものを捨ててまで、やっと手にした、ささやかな幸せに違いない。