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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第30章 《巻の弐―決別―》
 泉水が抗ったので、泰雅は仕方なくといった様子で泉水を解放した。泰雅の腕から自由になった泉水を泰雅は依然として皮肉げな笑みを刻んだまま冷ややかに見つめている。
 ふいに泉水の胸に、言い知れぬ哀しみが押し寄せた。
 泉水はその場に端座した。きっちりと膝を揃えて座り、両手をつく。土下座して見上げる妻に向ける泰雅のまなざしは、どこまでも冷え切っていた。つい今し方までの上機嫌が嘘のようでもある。
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