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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第30章 《巻の弐―決別―》
「望むなら何でも与えてやる。願いがあれば、何なりと叶えよう。だから傍にいてくれ、けして俺の傍から離れるな」
哀しげなほどの響きがこもる言葉だった。
恐らく泰雅もまた、泉水の中にある切迫したものを敏感に感じ取っていたのだろう。
「愛している。俺にはお前が必要なんだ。だから、どこへも行かないと約束してくれ」
泰雅は泉水のやわらかな胸に顔を埋め、声を震わせている。まるで母親に行かないでくれとせがむ幼児のようだった。