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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第30章 《巻の弐―決別―》
しかし、何の応えもなく、湯殿の中はしんと静まり返って、水音一つ聞こえない。
それでもなお、しばらく待ってみたが、泉水の返事はなかった。
ふいに、時橋の中で不吉な予感が湧き起こった。
「お方さまッ?」
時橋はもう躊躇わず、湯殿の引き戸を開けた。急いで広い湯殿の中を見回す。もうもうと白い湯気が立ち上る室内には、ただ満々と湯を張った檜造の湯舟が見えるだけで、どこにも泉水の姿はなかった。
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