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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第30章 《巻の弐―決別―》
 その都度、もぬけの殻の部屋を見ては嘆息するのが常であった。
―また、見事にしてやられましたね、姫さま。
 時橋はいつしか眼尻に浮かんだ涙をそっと袖で押さえた。
 いつもなら時橋には素直に湯浴みの介添えを任せる泉水が何ゆえ、今日に限って嫌がったか。むろん、逃亡を企てるためでもあったろうが、恐らくは、時橋にでさえ膚をさらしたくない理由があったのだろう。
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