この作品は18歳未満閲覧禁止です
蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第31章 《巻の参―新しい生活―》
元々、父が〝女子にしておくのは惜しい姫よ〟と嘆いたほど、向学心の旺盛な姫であった。村の幼い子らに簡単な読み書き、算術を指南するのは造作もないことである。泉水の返事を聞いた村長は殊の外歓んだ。
江戸からも離れた片田舎の村には、貧しいその日暮らしの百姓ばかりが肩を寄せ合うようにして暮らしている。親はいくら子どもに教育をつけてやりたくとも、習わせる金もないし、第一、田舎の村に寺子屋など、たいそうなものはない。