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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第31章 《巻の参―新しい生活―》
ましてや、読み書きの満足にできる大人がいない有り様である。皆、生きてゆくことに必死で、学問なぞ二の次になってしまう。
村長を務めて三十年という老爺は、既に六十を過ぎているという。村長いわく、自分は少々なら読み書きはできないこともないが、何分歳を取りすぎていて、今になって子どもに物を教えることも億劫だと、苦笑いしていた。何より、数年前に患ったそこひ(眼病)のせいで、視力の衰えも著しく、文字がろくに見えない。