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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第31章 《巻の参―新しい生活―》
泉水は叫び返すと、慣れた様子で銀杏の樹の幹をつたい、するすると下まですべり降りてくる。少し上方の枝にぶら下がり、〝よっ〟と掛け声と共に勢いをつけて地面に飛び降りた。
その器用な身のこなしを、若い男が呆れたように眼を丸くして眺めている。
「全っく、猿並に器用というか、身軽というか。だが、何度言い聞かせたら、判るんだ? 木登りなんぞ若い娘のすることじゃねえ。万が一、落っこちたら、生命はねえぞ?」