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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第31章 《巻の参―新しい生活―》
この男は篤次(とくじ)といい、隣の家に住む若者だった。歳は二十三になるという。隣の家といっても、歩けば四半刻はゆうにかかる距離だ。小さな村とひと口に言っても、広範囲に渡って、ぽつぽつと十数件の人家が点在している。
篤次の二親は早くに亡くなったと聞いた。たった一人の妹は二つ違いで、きくといったが、もう十年も前に女衒に連れられ、江戸に行ったきりだ。
篤次の両親は飢饉の年、やむなく娘を身売りしたのだ。その時、おきくは十一歳だった。
篤次の二親は早くに亡くなったと聞いた。たった一人の妹は二つ違いで、きくといったが、もう十年も前に女衒に連れられ、江戸に行ったきりだ。
篤次の両親は飢饉の年、やむなく娘を身売りしたのだ。その時、おきくは十一歳だった。