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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第32章 《巻の四―散(ちる)紅葉(もみじ)―》
もしかしたら、父は母がこの世を去って十五年近くを経た今もなお、心のどこかで母を想っているのかもしれない。泉水にとっては馴染みも薄く、記憶も朧だが、烈しい恋に身を灼いた一人の女性、同じ女として考えてみた時、母が俄に身近に感じられるような気がする。
二十五年という女の生涯はあまりにも短く儚いものではあっても、男に愛され、また、自らも男を愛し抜いての一生であれば、まだしも幸せであったのではないか。