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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第32章 《巻の四―散(ちる)紅葉(もみじ)―》
今日の泉水は、その指定席に座り、まるで惚けたような表情であらぬ方を見ていた。黒髪は結わずに、無造作に一つに束ねて、横に流している。襟許もいつもの彼女らしくなく、大きく開いていた。見ようによっては、そのしどけない姿は伝法なところがあって、これまでの愛くるしい泉水とは全く違う魅力―、男の好き心をいっそうそそる姿であったろう。
が、篤次には、判った。泉水は今、のっぴきならぬところまで追い込まれている。
が、篤次には、判った。泉水は今、のっぴきならぬところまで追い込まれている。