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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第34章 《巻の壱―山茶花の寺―》
泉水は伊左久に向かって、得意げに笑って見せた。自分が磨き上げたばかりの廊下を振り返り、微笑んでいる。その仕草は、まるで孫娘が祖父に向かって自慢しているかのようにも見える。
伊左久は泉水を相好を崩して眺めていた。
「おせんちゃんがここに来て、もうひと月にもなるんだな」
しみじみとした口調で言う伊左久には、このまだ娘といっても良いほどの年若い女にもまた相当の事情があるのであろうことは察している。