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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第36章 《巻の参―杏子の樹の傍で―》
 だが、男はそんなことには頓着なく、櫛を差し出した。時橋が近づいた一瞬を、男は逃さなかった。素早く耳許に顔を寄せ、〝時橋さまにございますね、今夜八ツにお迎えに上がります〟と囁いた。
―お前は誰?
 思わず誰何しそうになった時橋に、男が意味ありげな笑みを浮かべた。
―必ずや私が姫さまの許にお連れ致しましょう。
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