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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第36章 《巻の参―杏子の樹の傍で―》
 時橋はその視線に吸い寄せられるように、女たちの群れに近づいた。
―そこのお女中さま、こちらなどはいかがでございましょう。
 男は蒔絵の櫛を一つ手に取り、時橋に差し出してみせる。黒地に梅と鶯が描かれた、季節にふわさしいものだが、時橋のような四十過ぎの女にはいささか派手すぎる。
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