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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第36章 《巻の参―杏子の樹の傍で―》
 時橋は泉水を愛おしげに見つめた。まるで母親が娘にするように、手で泉水のほつれた髪を直す。と、時橋の視線が泉水の腹部で止まった。
「姫さま、もしやご懐妊では」
 時橋の顔には驚愕の表情があった。無理もない。半年前、榊原の屋敷を出奔した時、泉水には全くその兆候はなかった。むしろ、毎月決まってくる月のものが終わったばかりだった。そのときは懐妊なぞしてはおらぬことを時橋は知っている。
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