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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第36章 《巻の参―杏子の樹の傍で―》
四半刻後、産湯をつかい、絹の産着に包まれた赤子が泉水の許にやってきた。時橋が赤子を抱き、泉水の枕許に寝かせる。産褥の泉水は改めて我が子と対面し、微笑を浮かべた。
その瞬間の泉水を、時橋はこれまで見た泉水の中で最も美しいと思った。それは、数々の辛く哀しい出来事を乗り越え、絶望の底に突き落とされ、哀しみに打ちひしがれながらも雄々しく逞しく生きてゆこうとした彼女の強さから生まれた美しさである。