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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第38章 《巻の壱―別離―》
多くを望まず、今の平穏な幸せにだけ眼を向け、感謝していれば良いと考えている。
と、突然、クシュンと小さなくしゃみの音が部屋に響き渡り、泉水は時橋と顔を見合わせた。
「まあ、この子は器用なこと。寝ながら、くしゃみをするとは」
思わず笑った泉水に、時橋が眉をひそめた。
「姫さま、何を呑気なことを仰せでございますか。若君さまがお風邪でも召されましたら、大変にございますよ。ああ、お部屋が寒いのでしょうか」