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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第38章 《巻の壱―別離―》
時橋が途端に慌てふためく。泉水は破顔した。
「相変わらず、大仰な物言いよのう。たかだかくしゃみ一つくらいで、風邪を引いたやもしれぬと大騒ぎして」
昔から心配性の乳母であったが、こと黎次郎に関することとなると、最早大仰というよりは、見ていられないといった感がある。顔が赤ければ〝お熱があるのでしょうか〟、くしゃみをすれば〝お風邪を召されたのでしょうか〟、まさに孫に盲目になっている祖母そのものいった狼狽えぶりだ。