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第38章 《巻の壱―別離―》

「じゃあ、またな」
　夢五郎は泉水にも笑顔で片手を上げた。
　本当に、いつものとおりで、たった今、この男と交わしたばかりの会話がまるで嘘のようにさえ思える。
「また―」
　万感の想いを込めて見上げる。夢五郎のまなざしは、泉水を慈しむかのように優しかった。その優しさが、今は余計に哀しい。泰雅のように嫌いになれれば、気は楽だった。夢五郎を好きだから、優しい男だから、別れの哀しさと淋しさが身に滲みた。