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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第38章 《巻の壱―別離―》
 視線と視線が束の間絡み合い、離れてゆく。
 思えば、この男もまた泉水とは不思議な縁(えにし)で結ばれた男だった。
 泉水が深々と頭を下げると、夢五郎が背を向けた。遠ざかる背中に、涙が込み上げてくる。夢五郎の姿が角を曲がって見えなくなると、泉水はたまらず涙を流した。黎次郎の小さな身体を抱きしめ、低い嗚咽を洩らした。
 穏やかな早春の陽差しが母子をやわらかく包み込んでいる。
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