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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第38章 《巻の壱―別離―》
何をしてやりたくても、自分はもう泉水に何もしてやれない。それがやるせない辛さとなって、心を苛む。まるで心をあの山の上の寺に置き忘れてきたようで、ぽっかりと身体の芯に大きな空洞ができたようだ。
しかし、これは夢五郎が己れで選んだ道だ、もう引き返せない。綾小路藤原家の嫡子であるという憂き世のしがらみは、とうとう最後まで彼を縛りつけ、解き放ってはくれなかった。誰より守ってやりたいと願ったのに、結局、守ってやれなかった。
しかし、これは夢五郎が己れで選んだ道だ、もう引き返せない。綾小路藤原家の嫡子であるという憂き世のしがらみは、とうとう最後まで彼を縛りつけ、解き放ってはくれなかった。誰より守ってやりたいと願ったのに、結局、守ってやれなかった。