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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第38章 《巻の壱―別離―》
―泉水。
 夢五郎は、心の中でもう一度だけ、愛しい女の名を呼ぶ。ついに一度も〝泉水〟と名を呼ぶことはなかった。出逢ったときそのままに、〝姐さん〟と呼び続けた。せめて一度くらい、名前で呼んでみたかった。
 判っていたはずだ。あの女なら、泉水なら、必ずそう応えるはず―共にはゆけないと応えるはずだと判っていながら、それでも口にせずにはおれなかった。一緒に来てはくれないか―、と。
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