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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第39章 《巻の弐―黒い影―》
「なに、泉水がどうかしたとでもいうのか」
気のない様子で言い、また盃を煽ろうとしかけ、ハッとしたような表情で脇坂を見た。
「泉水の居場所が判ったのか?」
主のあまりの烈しい見幕に、脇坂は一瞬怯んだ。泰雅の整いすぎるほどの整った面に渦巻くのは怒りとも憎しみとも取れる感情のようでありながら、飢えた者が何かを求めて止まぬような懸命さを秘めている。
その憑かれたような瞳からそっと眼を逸らさずにはいられなかった。