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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第39章 《巻の弐―黒い影―》
「―誰の子だ?」
 その沈黙を破ったのは泰雅だった。
 脇坂は淡々と言った。
「その応えは、殿がいちばんよくご存じのはずでは?」
 脇坂は知っている。もう一年以上も前になるが、泰雅が霜月半ばのある夕刻、突如として馬を厩から引き出し、いずこかへ出かけたきり一晩中帰ってこなかったことがあった。結局、翌日の昼前に帰ってきたが、それ以降、泰雅の荒んだ生活が始まったのだ。
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