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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第39章 《巻の弐―黒い影―》
「実は、それがし、かねてから配下の者に奥方さまのお行方をひそかに探らせておりました。その者が昨日、ひと月ぶりに戻って参りまして、奥方さまらしきお方を見つけたと申しておりまする。その者から、奥方さまがご懐胎なさっておられるとの報が入りました」
 泰雅の盃を持つ手が宙で止まる。
「それは、どういうことだ」
「言葉どおり、申し上げたとおりにございます」
 短い沈黙が落ちた。まるで氷の針を無数に含んだような空気がその場に満ちる。
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