この作品は18歳未満閲覧禁止です
蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第39章 《巻の弐―黒い影―》
「おせんちゃん、庵主さまがお呼びだぞ」
伊左久が廊下から低声で声をかけてきた。ここでは相変わらず泉水は〝おせん〟と呼ばれている。時橋も人前では泉水を〝おせんさま〟と呼んだ。
「はい、今すぐに参ります」
泉水は返事を返し、黎次郎を時橋に任せて立ち上がる。障子を開けると、伊左久の顔には戸惑いの色が浮かんでいた。
「おせんちゃんにお客人だとさ」
「私にお客人とは誰でしょう、珍しいこともあるものですね」