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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第39章 《巻の弐―黒い影―》
泉水はすべての感情を殺した瞳で脇坂を見つめた。脇坂はいかにも温厚そうな―けれど、眼だけは笑ってはおらぬ顔で泉水を見返している。
「今ならば、まだ間に合いまする。どうか、お生まれになられた和子さまとご一緒に殿のおん許にお戻り下され」
刹那、泉水がハッとした表情になった。
この男は、本当に何もかも知っているのだ! そして、脇坂が知っているとすれば、この男の背後にいる泰雅もまたすべてを知っていることになる。