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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第39章 《巻の弐―黒い影―》
―良いか、こたびは泉水を連れ帰ることにこだわるな。今回、そちを遣わすのは泉水を連れ戻すためではない。泉水の生んだ赤子のみを連れて戻れば良いのだ。
それでも脇坂が泉水も黎次郎と共に江戸へと勧めたのは、他ならぬ彼自身の心遣いであった。生後一年にも満たぬ赤児とその母を引き裂く―、それはあまりにも酷い仕儀であった。何とかして、母子を引き裂くことなく一緒にいさせてやりたい、その一心で泉水に泰雅の許に戻るように勧めたのである。
それでも脇坂が泉水も黎次郎と共に江戸へと勧めたのは、他ならぬ彼自身の心遣いであった。生後一年にも満たぬ赤児とその母を引き裂く―、それはあまりにも酷い仕儀であった。何とかして、母子を引き裂くことなく一緒にいさせてやりたい、その一心で泉水に泰雅の許に戻るように勧めたのである。