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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第39章 《巻の弐―黒い影―》
 泉水も気色ばんで言う。
「ご聡明なる奥方さまでならば、もうお判りでございましょう。それがしは何としてでも、若君さまだけでも江戸にお連れ申し上げるつもりでござる」
「何と、そなたは黎次郎を江戸に連れてゆくと申されるか!」
「さよう、それは我らが殿の御意でもございますれば」
 脇坂の耳奥で、出立前に泰雅から受けた命令がありありと蘇る。
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