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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第39章 《巻の弐―黒い影―》
 脇坂の後ろ姿が次第に小さくなり、遠ざかってゆく。突如として赤児の泣き声が聞こえてきた。かすかに聞こえてくる泣き声が泉水の心を千々に引き裂く。
「黎次郎!」
 泉水は叫んで、階段を駆け下りようとした。その背中を時橋がひしと抱きしめる。
「姫さま、行ってはなりませぬ」
「でも、時橋。黎次郎が、黎次郎が泣いておる。早う、早う行ってやらねば」
 泉水の眼から涙が零れ、したたり落ちる。
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