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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第40章 《巻の参―出家―》
尼僧になるべく修行を始めてはや一年余りが過ぎ、泉水の読経もかなり上達した。光照と共に唱和する声には最早、初めの頃のつたなさはない。教典の解釈も元々利発な泉水は乾いた砂に水が滲み込むように憶えていった。あと二、三年もすれば、一人前の尼僧になれると光照もひそかに愉しみにしていた。
いつものように、静かな堂内に浄らかな二人の声が響き渡る。泉水の傍らには時橋も端座して、こちらは経こそ唱えてはおらぬけれど、きちんと手を合わせている。
いつものように、静かな堂内に浄らかな二人の声が響き渡る。泉水の傍らには時橋も端座して、こちらは経こそ唱えてはおらぬけれど、きちんと手を合わせている。